星座のズレは、「アヤナムシャ」っていいます

さて、ここ数日ネット上で、星占いで使われる星座と実際の天体の位置とのずれについて述べられた事柄がニュースになっているようで、星占いをあまりご存知でない方は「今までの自分の星座は間違ってたんだ!」とばかりに慌てているという方もいらっしゃるようです。
実はプロの占い師なら、このズレのことは誰でも知っていることです。
ですから、西洋占星術を扱うどの占い師さんも、今はそのことに対する質問のお答えでお忙しいことだと思います。
そこでわたくしは、以前(2009年3月)に書いたものをここに転載しようと思います。
元の記事はここ( http://blogs.yahoo.co.jp/irisacion7/13258657.html )ですが、キモはコピペですので、ここでお読みいただければいいかと思います。
よろしくお願いします。
 
* アヤナムシャ
また何かわけのわからない言葉が登場しました。
「アヤナムシャ」
主にインド占星術で使われる言葉です。
これは、地球の歳差運動による春分点のズレのことです。
春分牡羊座の始まりだということは、少し詳しく星占いをご存知の方ならばごく当たり前の理屈なのですが、実は春分点というのは、今は空に輝く星座で言うと魚座あたりにあるのです。
「は?」
ですよね。
「そんなんいつからや?」
って、2000年以上前からです。

もともと地球が太陽の周りを回る面に対して地軸が少し(約23.5度)傾いているというのは、中学校の理科などで習うのではないかと思います。
この歳差運動によって、春分点黄道を少しずつ後退するようにずれていっています。
現在、春分点は72年間で黄道上を約1度逆行するということが知られています。ですから、ひとつの星座を通過するのに約2100年かかるわけです。一周するのに25000年以上です。(このあたりでわたくしは気が遠くなりそうです。)

今からおよそ5200年くらい前のエジプトの壁画には、牛の背中に大きな太陽が描かれたものがあるそうです。この頃には春分点は牡牛座に位置していました。
その後現在の西洋占星術の体系ができたギリシャ時代には、春分点牡羊座に位置していました。これを観測したのはヒッパルコスという天文学者ですが、春分点の移動自体はそれ以前から知られていたようです。
天空360度を30度ずつ12のパートに分けるという方法自体は、いつごろから行われていたのかは正確にはわかっていないのですが、牡羊座の0度を春分点として、12のパートのスタート位置とするシステムは、このヒッパルコスによって定められました。
今わたくしたちの使っている西洋占星術は、この基準を元にしてチャート(占いの元になる図、ホロスコープ)を書きます。
これを、トロピカル方式といいます。

現在の春分点は実際の魚座の5度あたりに相当するため、トロピカルでいう牡羊座0度から、若干ずれています。
このずれが「アヤナムシャ」と呼ばれるもので、インド占星術では、このずれを修正してチャートを書きます。
これをサイデリアル方式といい、実際の星座と星の位置関係に近くなります。

このように書いていくと、実際の春分点がどこにあっても「牡羊座の0度」と決めてしまっているトロピカル方式より、アヤナムシャによってずれを修正するサイデリアル方式のほうが、科学的で正しいのではないかという考えが生まれそうです。
しかし、このアヤナムシャの値に関しては諸説あり、完全に統一された値ではありません。
これは、ずれを修正するための「基準」をどこに持っていくかということがさまざまな説によってバラバラなためですが、現在では、ラヒリのアヤナムシャがもっとも多く使われているということです。
わたくしが読んだ数冊の本も、ラヒリのものとクリシュナムルティのものがありました。また、すでに修正された値のみを掲載していて、どのアヤナムシャを採用しているかまでは言及されていないものもありました。
結局アヤナムシャでずれを修正するといっても、それは春分点牡羊座の0度に決めるのと同じく、歴史上、または伝説上のどこかを基準として、そこから春分点がどのくらい動いたかというふうにしなくてはなりません。
つまりトロピカルとサイデリアルの違いは、基準をどこにとるかの違いであって、どちらが科学的であるとか、どちらが信頼性があるとかの問題ではないのです。
ですから、占者自身の中できちんとした基準がありさえすれば、より便利で楽しく利用できるものを使うのが良いと、わたくしは思っています。

さて、現在の春分点魚座の5度付近。
逆行しているわけですから、春分点はまもなく水瓶座に入るということになります。
いわゆる、「水瓶座の時代」という時代に入るのだそうです。
一部の人々の間では、この「水瓶座の時代」というのは大きな変革があると期待されている新しい時代であると言われています。
しかし、この時代区分にはさまざまな説があり、単に春分点の移動だけで論じられることではないようです。
現に、今は魚座の時代といわれていますが、すでに水瓶座の時代に入っているという説や、移行期であるという説などさまざまです。
なお、上記の「まもなく水瓶座に入る」というのも、だいたい500年くらい後のことです。念のため。
ちなみにシュタイナーの時代区分では、現在はポスト・アトランティス時代の第5文化期で魚座の時代。これは西暦では1413年~3573年ですから、水瓶座の時代は1500年以上先にならないと来ないことになります。

気の遠くなるほど、長い時間ですね。
現代に生きるわたくしたちにとっては、そんなことは想像していられる場合ではないのかもしれません。
わたくしたちは日々、1時間とか30分とか、場合によっては10分5分という短い時間の単位で仕事や勉強に追われています。
しかし、そのようにせわしない日々だからこそ、少しだけ時間をとって、広い宇宙や長い時間に思いをめぐらすのも楽しいのではないでしょうか。
占いは運命や人間関係を見るだけでなく、そういう楽しみ方もあると感じていただければ幸いです。