2010年10月新月

* 新月情報
10月8日午前3時46分天秤座14時24分の新月です。
今日あたりから蠍座にある金星が逆行するのですが、その金星は、そのすぐとなりにある火星とコンジャンクション(0度。しかし実際は2度強離れていますので、少しゆるいです)の関係になります。これらの星と、明日の新月は約30度の角度を形成しています。もちろん、月と太陽が重なっていますので、四つの星が二つずつで作るセミセクスタイル(60度)ということになります。
また、今回はこのセミセクスタイルコンジャンクションの組み合わせがもうひとつできています。魚座天王星木星コンジャンクション。この二つの星と水瓶座海王星セミセクスタイルという状態です。
手を伸ばせば何かに届くような、あるいは手を伸ばせば届くかもしれない何かに出会えるような、そんな星の様子です。
新月のころ、すでに金星は逆行していますので、少し「振り返る」楽しみも追加されます。
手を伸ばして届くのは、ひょっとしたらかつて失ったかもしれない何かかもしれません。
また、水星と土星が天秤座でコンジャンクション(0度)を作っています。辛抱強く考え続けること、時間をかけて取り組む知性的な営みが、幸せを呼びそうです。逆もあるかな。一瞬のひらめきが長い時の流れを一気に進めたり、長く固まっていた人間関係を打開したりとか。向き合っていた時間が長ければ長いほど、解けるきっかけがきらりと見つかるような、そんな気がします。
 
* ホラリー
前々回にイングレス、前回にボイドについて書きましたので、今回はホラリーについて。
そもそも、「ボイド」という概念は、ホラリー占星術から出ているもので、惑星が空虚な状態になっていることを指していいます。さらにホラリー占星術では、占うときの月の状態を重要視します。月がボイドの時、その質問を無効として、「解答を得られない」「質問そのものが無意味である」という答えを出すことがあります。転じて、「心配ない」という解答に導かれる場合もあります。
そんなわけで、ボイドの話をするならば、ついでにホラリーの話も、と思ったわけです。
 
さてみなさんは、携帯電話の占いサイトなどをお試しになったことはあるでしょうか。それらのサイトの有料メニューの中には、「今動いている星の状態で、あなたの質問に答えます」というようなものがあったかもしれません。それらの多くがホラリーの技法を用いています。
「ホラリー(horary)」とは、「時間に関係する」という意味です。
もともと占星術とは時(horo)を見る(scope)ものです。ひとつの事柄について、その起こりから未来の状況まで、時の経過とともに動く星の運行を元に探っていきます。その中でも特にホラリーという名称で呼ばれるこの技法は、質問が提出されたまさにその瞬間の星の位置を記したホロスコープのみを見て解答していくのです。
つまり、質問が提起された瞬間の天体の位置を見れば、その瞬間の天体が質問者に与えている影響を読むことができ、その結果、その質問に対する解答が示されるという考えなのです。
しかし、実際には出生ホロスコープと実際の星の運行との関係でかなりの情報が得られます。わたくしなどはホラリー自体、あまり使うことはありませんし、占星術師以外には、一般にもそれほど知られた技法ではないでしょう。
 
にもかかわらず、なぜこのような技法が使われるようになってきたのでしょうか。
ホラリーは、17世紀の占星術家ウイリアム・リリーによって世に出されました。
3世紀ごろからキリスト教によって弾圧されていた占星術は、15世紀ごろに「科学的である」という考えが起こり、1600年には天文学者占星術家でもあったケプラーが、神聖ローマ帝国のルドルフ二世の宮廷に仕えるというほどに権威を持つようになりました。しかし、そのころから人々は占星術を妄信するようになり、リリーが活躍した17世紀ごろには、生まれた子どものために運のよいホロスコープを買うという風習が生まれるに至ったのです。そうすると、その子どもが大人になってから、親に買ってもらったホロスコープ占星術師のところに持ち込むことになり、正確な生年月日がわからず、運勢判断ができないということが起こってきました。
そこで、当時イギリスで活躍していたウイリアム・リリーは、依頼者の生年月日を使わなくても占うことができる方法を編み出しました。それが、「ホラリー」なのです。
質問が出された瞬間のホロスコープで占うホラリーなら、依頼者の提示する生年月日が信用できないものであっても、それを使わずに判断できるのですから大変便利です。
占星術は基本的には出生ホロスコープの作成、解読から始まります。
しかし、今すぐ答えがほしいというような事柄の場合ですと、悠長に出生ホロスコープを見て「そろそろあなたの出生の木星に経過中の土星が…」なんていうより、「支配星のアスペクトがよくありません。見直しを。」とか言うほうが早いですよね。
特に遺失物の発見、買い物がお得かどうかといった生活の中での質問にはほんとうに役に立ちます。
 
さて、このホラリー占星術で、月は特に重要な天体として扱われると書きました。
月は、他の天体の位置によって、質問者をあらわす重要な役目を帯びたり、状況によって、事の成否が判断できたりします。
何度も書いていますが、月がボイドの時は「無効」と出たりするのですから、その役割の大きさはかなりなものですよね。
それに、月の作るアスペクトについては、他の星同士が作る場合より、ちょっとだけおまけがあります。
ホラリーでは、星と星がだんだんひとつのアスペクト(角度)を作っていって、きっちりその角度になるまでの状態(アプライ)をアスペクトとして採用します。その角度を少しでも過ぎた場合(セパレート)は、用いないのが約束です。しかし月に関しては、1度以内のセパレートなら、重要な事柄に関してのみそのアスペクトにリスペクトを持つことになっています。つまり、1度以内なら、過ぎたとしても考えに入れて判断することができるということです。
こんな使い方は月にしか認められていません。
昔から、月がいかに人々にとって大切で、身近なものだったかということがうかがえる事例ではないかと思います。
 
さて、明日は新月です。
今回の新月は、本当に願いのかないそうな、あるいはかなう願いの見つかりそうな新月です。どうかみなさん、月のメッセージに耳を傾けてみてくださいね。
 
参考
「モダンホラリー占星術和泉茉伶著 河出書房新社
「〔応用〕占星学入門」石川源晃著 平河出版社
「驚異の実用占星学」マリオン・D・マーチ&ジョーン・マクエバーズ著 青木良仁訳 魔女の家BOOKS