2010年 9月満月

* 満月情報
9月23日秋分の日18時18分、牡羊座0度15分の満月です。
牡羊座に入りたての満月ですね。この時刻の30分くらい前に牡羊座に入ったところです。入りたてほやほや、太陽もこの日23日12時10分に天秤座に入ったところですし、なんだか妙に新鮮です。来月もう一度牡羊座で満月がありますが、そこで次のステップに向けての最後のひと踏ん張り。今回の満月は、始まりの始まりという感じです。
また、火星と金星は相変わらず蠍座で比較的近い位置にあります。
秘められた情熱や愛が、はぐくまれるときでしょうか。
さらに、22日今夜は中秋の名月ということで、今日あたりに何かおまじないでもされたら、とても効くかもしれませんね。最近テレビのCMで、グラスのロゼワインに満月を写すと恋が実るなんて言ってますよね。どなたかお試しになって、首尾をお教えくださいませんか?
雨が降っていなければ、東に満月と木星天王星、西に火星と金星が見えるのかな。
日没後、少し空を見上げてみたいですね。
 
* ボイド……魔の時間帯
前回の「月よ月よのお話 9月新月」で「イングレス」ということについて書きました。
「イングレス」とは、星が動いて隣の星座に移ることをいうと書きました。
わたくしが持っている暦には、どの星がいつどこへ移るというようなことが書かれてあり、それを見ますと、太陽が9月23日の12時10分に天秤座に移るということがわかるわけです。さらに、月に関しては別に表を設けて、イングレスの直前にどの星座といつどんな角度(アスペクト)を作ったかということまで書いてあります。
これを見れば、月が別の星と角度(アスペクト)を作った後に次のイングレスまでどの星とも角度を作らない時間帯があることがわかります。この月のように、ある星が星座移動の前にどの星ともある一定の角度(メジャーアスペクト)を作らない、つまり星座を移動しなければ別の星とメジャーアスペクトを作ることができない時間帯のことを、「ボイド(Void of Course)」と言います。
ボイドは、空白の時間帯です。どの天体についても起こりますが、一般的には月のボイドのことをさすことが多いようです。
では、このボイドという時間帯にはどのようなことが起こるのでしょうか。また、それは日常生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
一般的には、月のボイドのときには、情報が誤って伝達されることが多いといわれます。
具体的には、間違い電話、メールの誤送信、内容の間違い、勘違いなどです。
また、ボイドの時には、選択間違いを起こすこともあるといわれます。
せっかく気に入って買ったブラウスが、帰宅して改めてみると、期待と違っていたとか、サイズを間違っていたとか、そんなことです。
あるいは、ボイド時間に旅行に出かけるとその主たる目的が果たせないというふうに言う占星術家もいます。
ちょっと怖いですね。
小さなことでも重なると混乱を免れませんし、状況によっては致命的になることさえあります。
さらに、このボイドの時間帯には、新しいことをはじめたり、重要なことを決定したりしないほうがよいという占星術家もいます。
ここまで書けば、皆さんも、このボイドがいつ起こるのかということを知りたいと考えられるのではないでしょうか。
あらかじめ間違いを犯しやすい日時を知っていれば、その日時を避けることによって、毎日の生活を安全に暮らすことができそうですし、もし自分で決められないとしても、被害を最小限におさめるための準備ができそうです。
ボイドの時間帯だけは外に出ないとか、メールを送らないとか、そのようにできたらいいのですが…。
 
わたくしの手元の暦を見ると、月のボイドは、一ヶ月に13~4回(2010年9月は14回)あります。およそ二日に1回ですね。
長さも、1~2時間の場合もあれば、6時間以上続く場合もあります。
ものすごく多いんですね。もう、しょっちゅうボイドしてるって感じです。
二日に一回、4時間も5時間もの「使えない時間帯」があるということです。もちろん、夜中にかかっていることもありますが、昼間の場合は、重要な会議やデートの時間帯が、丸々ボイドに収まってしまうということも普通にあります。
ですから、これらを全部気にしていたら、はっきり言って、生活するのに不便です。
そのため、わたくしはあまりこまやかに取り上げません。というより、ほぼ無視しています。
そんなの無視したら、後で大変なことになるのではないかと思われるかもしれませんね。しかも、いろんな危険性をさんざん書いておいて(笑)
実はそうでもないのです。後になって、「あ、ボイドやったわ(笑)」と言う程度のことがまれにあるというくらいです。
ボイドについては、気にするのが一番いけないと、わたくしは思っています。実際、気にしてしまうとボイドの呪縛にかかってしまいます。ですから、何かちょこっとしたミスのときに、「きっとボイドやってんわ」という言い訳程度にお使いになるのが一番いいのではないかと思うのです。
 
実はこのボイドという考え方、もともとはホラリー占星術horary astrology)で使われていたものなんですね。
ホラリーとは、「時刻に関する」という意味で、質問者がある特定の問題について占者に対して質問を発し、依頼した瞬間のホロスコープを作成して占うものです。
その場でその瞬間のホロスコープを作成しますので、日本語では「即時占星術」と訳されます。
関係者や質問者の生年月日も必要ありませんし、ひとつの質問について具体的な回答が得られるため、大変便利です。
特に遺失物の発見、イエス・ノーの形で答えられるものについて、その威力を発揮します。
このホラリー占星術においては、月のアスペクトが重要な意味を持ちます。
月がボイドの場合、どの星ともアスペクトを作らないということになりますから、月のボイドがあるときの質問に関しては、質問自体が意味を成さないということや、特に取り立てて何も起こらないということを示すとされます。
しかし、事の成否を占うときに他の条件が重なっている場合に月のボイドがあれば、その事案は成功しないといわれます。
ホラリー占星術は、17世紀のイギリスの占星術家ウイリアム・リリーが考案したといわれます。
リリーによればボイドは「魔の時間帯」で、ホラリー占星術ホロスコープチャート作成の際に、その時刻がボイド時間帯であれば正しい答えが得られないため、ホラリー占星術をおこなうべきではないということです。
こうしたことから、「ボイド」というのは、ホラリー占星術にとっては非常に重要な考え方であるといえます。
しかし現在では、一般的な占星術の中でも「ボイド」という考え方は重要視されています。
「占星学入門」などの著作で有名な石川源晃(1921-2006)は、1985年に「ボイド占星術」を著し、さまざまな実例を引いて、「情報伝達のミスによる勘違い」が引き起こす事柄について分析しています。
このころから、ボイドというのはホラリー占星術の技法としてだけでなく、広く一般の占星術の技法として用いられるようになったようです。
石川は、「〔演習〕占星学入門」の中でも、ボイドの考えを利用して、飛行機事故や医療ミスなど、さまざまな事案を分析しています。これによると、ひとつの判断がボイド時間帯におこなわれたために重大な結果に至った例がたくさんあるということです。
しかしここで、ボイド時間帯を避ければ事故は起きないといっているのではありません。
もし、ボイド時間帯に何かよくないことが発生しても、それが発見されて大事に至るまでに解決されれば、大きな事故には繋がりません。ボイド時間帯というのは、それが見過ごされがちなのです。
ですから、ボイド時間帯については、それを避けるというよりも、そこから被害を出さないようにするということが大切なのです。そのためには、重要な決定や発案がボイド時間帯に出された場合には、ボイド終了後にもう一度よく見直すということが大切なのです。
 
ほぼ一日おきに数時間の単位でやってくるボイド時間帯は、生活の中では避けることはできません。
それよりも、毎日の流れの中で軽く流している事柄があれば、もう一度見直すというひと手間を書ける姿勢のほうが大切なのかもしれません。
ボイドの時間帯には、勘違いや選択ミスが起こりがちです。ですから、手順が決まっている事柄を、一つ一つ確認しながら丁寧におこなう分には何も起こりません。
さらに、設定された会議や作業の時間で新しい事柄を要求されるとき、ボイド時間に入る以前によく準備しておき、ボイド時間を終了してからまた確認するという作業がおこなわれれば、万全であると思われます。
これなら、ボイド時間帯を知らなくても、事前と事後の確認を丁寧におこなうという日常の行為の中で実行できるのではないでしょうか。
しかし、やはりボイドの時間帯を知りたいという方はいらっしゃいますよね。
そういう方は、ボイド時間帯を記したカレンダーや手帳などをお持ちになるといいのではないかと思います。
わたくしは日ごろ、石井ゆかりさんの「星ダイアリー」を利用しています。
月のボイドは全部、大変見やすく出ていますので、ちょっとした約束や連絡事項がその時間帯に入っていれば、翌日もう一度連絡しあうことも可能ですから便利です。
ですから、どうしても気になる方は、日々ボイドを確認するためにお使いになることができます。
わたくしは、むしろ手帳として使いやすいということと、星の動きが書いてあるため、ちょっとしたことなら天文暦の代用になるから使っているので、ボイドを確認するという目的ではありません。それに、年間占いも各星座のプロフィールも充実していますので、手帳とは言いながら読むところもたくさんあります。
翌年のものが毎年9月末に発売されますから、来週には書店の店頭に並ぶのではないでしょうか。とても楽しみにしています。皆さんも、書店でのぞいてみてくださいね。
って、宣伝している場合ではありませんね。
最初にも書きましたとおり、ボイドは、それを気にすればするほど、その呪縛にかかってしまいます。
何しろ、「魔の時間帯」ですから。
君子危うきに近寄らず。やってくるボイドも知らない間に通過させれば関係ありません。いちいち気にするから向こうも寄ってくるのです。
ただ粛々と、明るく、希望を持って、丁寧に毎日の生活をおくられることをおすすめします。
そのほうがずっと安全で確実な方法だと、わたくしは思います。
 
《参考》
「驚異の実用占星学」
マリオン・D・マーチ&ジョーン・マクエバーズ著 青木良仁訳 魔女の家BOOKS
「〔実習〕占星学入門」
「〔演習〕占星学入門」
「〔応用〕占星学入門」 石川源晃著 平河出版社
「星ダイアリー 2010」 石井ゆかり著 幻冬社コミックス