2009年2月満月

* 満月情報
2月9日23時50分、獅子座20度60分の満月、月蝕つき!
金星と火星は60度、土星天王星は180度、金星と冥王星はちょっとゆるめで90度という、気合の入った星回りです。
こんな星の配置を見ていると、愛し合っているのに、なかなか結ばれない若い男女の姿が思い浮かびます。運命が横槍を入れてくるため、権威や世の中のドサクサがごちゃ混ぜになって、互いが意図的に手を伸ばさなければならないというわけで、この満月の夜に手に手をとって、いざ駆け落ち!なんていう、「運命に翻弄される若い男女」を、金星と火星になぞらえてみたくなるのです。
ロミオとジュリエットか、テレノベラか、といったところです。
あ、新月の日に、恋に関する願い事を書いてみた方、このあたりで何か結果が出るかもしれませんね。

* 金星のこと
今年、2月のはじめごろから6月のはじめごろまで、金星は牡羊座に長期滞在します。
牡羊座の皆様、お待たせいたしました。
愛の星、お金の星、喜びの星である金星が、あなたの真上で半年近くも輝き続けるのです。

金星というのは地球から見て太陽に近いわけですから、太陽と2星座以上離れることはまずありません。そして太陽に近いところで、大体一ヶ月でひとつの星座を通過します。
この金星が、2年に一度くらいひとつの星座に長期滞在するのです。
それが今回は牡羊座ということで、今年の年間の星の状況として特徴的なものです。
これが各星座ごとにどのような役割をするのかということは他の星占いの先生方にお任せするとしまして、わたくしは、占星術の歴史で、金星がどのように位置づけられていたかを書いてみようかと思います。

金星はビーナスともいい、保護を表わす木星(ジュピター)と並ぶ吉星(ベネフィック)とされています。
ビーナスといえば、愛と美の女神ですよね。
多くの人が、この星の恩恵にあずかりたいと望むのではないでしょうか。
しかし、金星にビーナスがあてはめられたのは、ギリシャ時代の末期と言われています。
実はそれ以前は、金星は戦いや災いを表わすとして恐れられる凶星(マレフィック)とされていました。そして、あてはめられていた神は、戦いの女神「イシュタル」だったのです。

歴史的な順序で見ますと、紀元前5000年ごろの初期のシュメール時代に金星の神として当てはめられていたのは、「豊饒の神」としての「イナンナ」または「イシュタル」とみられます。
イナンナはシュメール語、イシュタルはアッカド語で、それぞれ、シュメール神話、メソポタミア神話における豊饒と戦いの女神としてあがめられ、戦争に勝利した際には、イシュタルのための盛大なお祭りが行われたそうです。
紀元前400年ごろのギリシャ前期の記録では、金星は戦いと災いをもたらす女神「イシュタル」として、凶星(マレフィック)に分類されていました。
その後、紀元前295年ごろにローマにビーナスを祭る神殿が建設されて以後は、金星は「愛の神」ビーナスとなり、吉星として取り扱われるようになったようです。
愛と美の女神としてよりも、戦いの女神としての歴史のほうがずっと長いのですね。

実は日本にも、「西洋占星術のもと」は伝わっていました。
日本では、空海によって密教の一部としてもたらされた占星術である宿曜術、安倍清明でおなじみの陰陽道占星術はその一部)などにその技術が見られます。
ところがこれらの日本の占星術では、金星は凶星で、その支配する神は歳殺神(さいせつしん)といって、武を好む神なのだとか。つまり日本に入ってきた占星術は、ギリシャ前期、紀元前400年以前の占星術なのですね。
以前にも日蝕のことで少し触れましたので、覚えておいでの方もいらっしゃるかと思いますが、日本に入ってきた占星術は、とても古いスタイルのものだったのですね。
とはいえ、現在でも日本独特の占星術は生きています。
わたくしも、人間関係などを見るときは宿曜術を少し用いますが、大変興味深いものです。

今回は「金星」に的を絞って、占星術の歴史を少しだけ見てみました。
時代や用いられる国によってさまざまに変化する占星術ですが、上手に使って日々の生活に楽しく役立てたいものですね。